ミツバチの飼育を実施するにあたって、日本大学経済学部周辺におけるミツバチの生育環境を把握するために、人工衛星の観測画像から蜜源植物推定マップを作成してみました。
ミツバチの行動範囲は約半径2kmと言われており、範囲内に蜜源植物が存在していればどこでも養蜂を行うことが可能です。しかし、正確な蜜源植物の位置を判断するマップはほとんどありません。そこで、衛星データを用いることで半径2km圏内における植生分布を定量化することができました。この手法は衛星のデータがあればどの地域でも蜜源植物推定マップが作成することが可能になります。
ミツバチが喜ぶ花のマップ

作成方法
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が運用する地球観測衛星「Sentinel-2」の観測画像から蜜源植物推定マップを作成します。現在、Sentinel-2は3機体制で観測を実施しており、地球上のほとんどの陸地を5日ごとに再訪することが可能となっています。蜜源植物推定マップ作成には、解像度10mのB2(Blue)、B3(Green)、B4(Red)、B8(NIR)のバンドを用います。Sentinel-2の観測画像を冬・春・夏の3時期用いることで、落葉・常緑の判別精度が向上し、季節ごとの植生の変化を捉えることができるため、より正確な蜜源植物の分布を推定できます。そのために、複数のバンドを結合して、ひとつのラスター画像に統合して解析を始めます。
解析ソフトは、オープンソフトの「QGIS」を使用します。さらに、教師付き分類に特化しているプラグインSCP(Semi-Automatic Classification Plugin)も用います。画面上に表示された観測画像から教師エリアを選定し、高精度な土地被覆図を作成します。蜜源植物のうち、特に落葉広葉樹は、開花時期が多様であり、蜜蜂にとって重要な蜜源となるため、落葉広葉樹の分布を把握することが重要となります。しかし、Sentinel-2の観測画像から落葉広葉樹の樹種の特定まではできません。そのため、現地調査の情報を付与して蜜源植物推定マップを作成していきます。皇居周辺を2024年8月8日に現地調査を実施したところ、サルスベリやシロツメクサで数匹のセイヨウミツバチが花の蜜を吸っている場面に立ち会うことができました。

蜜源植物推定マップ作成の流れ

皇居の蜜源植物推定マップ(2024/8/8現地調査)