尾道養蜂研修

2月末、経済学部非常勤講師の奥田先生が養蜂を営まれている広島県尾道市の因島へ見学に伺いました。早朝、大雨の東京を新幹線で出発しましたが、10時30分ごろに新尾道駅へ到着する頃には、幸いにも雨は止んでいました。奥田先生の養蜂場では広大なみかん畑を栽培されており、春には香り高い「みかんの単花蜜」が採れるそうです。現地では、養蜂という共通の話題で盛り上がり、気づけば3時間ほど熱心に話し込んでしまいました。当日はまだ2月末で気温も低めでしたが、巣箱からはミツバチたちが驚くほど勢いよく飛び回っており、その生命力の強さに圧倒されました。

翌日は、帰京の途につく前に尾道市街と因島を巡りました。坂道の多い情緒あふれる尾道の街並みや因島の景色を堪能しました。因島の海岸線を巡っていると、五分咲きに色づく早咲きの河津桜を見つけました。ふと足を止めて花びらを覗き込んでみると、そこには一生懸命に花粉や蜜を集めるミツバチの姿がありました。よく観察してみると、お尻の模様や大きさから「これはセイヨウミツバチではなく、ニホンミツバチではないか」と感じました。すると案の定、すぐ近くにニホンミツバチ用の巣箱が2個設置されているのを見つけました。これまでは何気なく眺めていた景色の中に、ミツバチの営みや養蜂の形を見つけられるようになったこと。養蜂を始めてから、自分の中に「今までにはなかった新しい視点」が加わったことを実感する、嬉しい瞬間でもありました。

また、お土産店を覗くと、レモンやはっさくなど瀬戸内ならではの柑橘類を使った商品が数多く並んでいました。これだけ柑橘の産地であれば蜂蜜も……と探してみたのですが、意外にも蜂蜜を扱っているお店は少なく、少し驚きました。特産品と養蜂の関係性についても、改めて考えるきっかけとなった研修でした。

ミツバチに刺される_その2

2025年7月に投稿した「ミツバチに刺される」という記事は、今でも多くの方にお読みいただいています。今回はその第2弾(?)として、水道蜂プロジェクトの顧問の先生が経験した、冬の日の出来事をお届けします。

事の始まりは、2月23日に行われた干場先生による内検解説でした。私たちの蜂群は、密度が薄いにもかかわらず巣板の枚数が多いことが判明。そのため、不要な巣板を抜いて密度を高める作業が必要になりました。しかし、折しも大学は入試シーズンの真っ只中。学生の立ち入りが厳格に制限されていたため、作業を顧問の先生に託すことになりました。

先生は面布+つなぎを着用して内検に臨みましたが、思わぬ隙がありました。つなぎの足元のわずかな隙間からミツバチが入り込み、太ももの裏側を刺されてしまったのです。直後は痛みがあったものの、数十分もすれば痛みが引き、「ミツバチに刺されても自分は大丈夫だ」と、先生からは少し誇らしげな報告を受けていました。

ところが、異変は2日後にやってきました。刺された箇所が赤く腫れ始め、痒みに襲われたそうです。幸い痛みはなかったとのことですが、「直後は平気でも、後から反応が出る」というミツバチの洗礼を身をもって体験する結果となりました。

次世代の養蜂人材育成のための研修事業

2026年2月に、公益社団法人国際農林業協働協会(JAICAF)が主催する「次世代の養蜂⼈材育成のための研修事業(国内研修)」の定期ミーティングがあり、オブザーバーとして参加いたしました。このプロジェクトは日本中央競馬会(JRA)の助成により運営されており、高校生が養蜂の意義や役割、さらには養蜂産業が抱える課題とその解決策を実践的に学ぶ取り組みです。

当日は、全国の高校による活動報告に加え、⼲場英弘先⽣による飼育技術講義が行われました。さらに、会場となった聖学院中学高等学校で飼育されているセイヨウミツバチの内検の見学や⼲場先⽣による内検解説も実施されました。

他校の養蜂場を見学することは、自校とは異なる工夫や発見があり、非常に貴重な体験となります。2月という時期ならではの「春宣言(春の活動開始の判断)」や「建勢給餌(群を強くするための餌やり)」、そしてこの時期の目標となる「額面蜂児(巣板いっぱいに幼虫がいる状態)」を目指す管理方法など、実戦的な技術を深く学ぶことができました。

蜂群崩壊と春宣言

1月29日の内検にて、2群の女王蜂の解放を行いました。群を維持し、春に向けた産卵を促すため、巣板の上に代用花粉と砂糖を配置しましたが、どうやら私たちの給餌方法に問題がありました。餌までの動線がうまく確保できず、順調に越冬を続けていた貴重な1群を、餌不足(餓死)により崩壊させてしまいました。巣門の前には力尽きたミツバチが多数転がっており、急いで巣箱を開けてみると、底には大量のミツバチが横たわっていました。巣板に残っていたわずかな蜂たちも、動きは非常に鈍い状態でした。

ここまで大切に育ててきたメンバーにとって、そのショックは隠しきれるものではありませんでした。

この事態を受け、干場先生・渡辺先生にご相談したところ、重要な教訓をいただきました。

実際に、動かなくなった働き蜂が巣穴に頭を深く突っ込んでいる姿が多数見られましたが、これは貯蜜が底をついた際に見られる典型的なサインでした。

この痛恨の経験を糧に、生き残ったもう1群に対しては、給餌箱に砂糖水(砂糖2:水1の割合)を十分に与え、「春宣言(春の飼育管理への切り替え)」を行いました。失った群の分まで、残る1群を大切に守り抜きたいと思います。

蜂群配置マップ

毎年1月31日は、養蜂家にとって大切な節目である「蜜蜂飼育届」の提出期限です。 無事に手続きを終えましたが、同封されていた「養蜂に関するお知らせ」の中に、非常に興味深い資料がありました。それは、東京都内における「蜂群配置図(令和7年1月末時点)」の地図(左下の図)になります。

私たちが都市養蜂を始めて以来、多くの方から「あそこでも養蜂をやっているよ」というお話を伺ってきましたが、実際にどの程度の規模で行われているのか、これまではなかなか実感が持てませんでした。しかし、今回初めてこの地図を目にし、多くの気づきがありました。まず驚いたのは、「こんなに近くにも仲間がいたのか」ということです。私たちが活動する経済学部の周辺エリアだけでも、30〜59群ものミツバチ(二ホンミツバチ、セイヨウミツバチの合計)が飼育されていることが分かりました。

また、この都内の蜂群配置図全体を俯瞰すると、自然豊かな多摩中南部〜西部(八王子市・町田市・日野市周辺)と都心部(千代田区・中央区・港区周辺)の2つの大きな高密度エリアがあることが確認できました。特に都心部では、ビル屋上などを活用した「都市養蜂」が文化として定着している様子が見て取れます。これは、都心部が皇居や新宿御苑といった豊かな植生に支えられていることを再認識させてくれる結果でした。

私たちのプロジェクト拠点の近隣にも多くの蜂群があることを知り、都心での養蜂が「目に見えない強い繋がり」の中で成り立っていることを実感しました。私たちの巣箱を健やかに保つことは、地域全体のミツバチを守ることに直結するので、病害虫管理の徹底を常に心掛けるとともに、限られた地域の蜜源を分け合っていることに感謝し、周囲への思いやりを大切にした養蜂を続けていきたいと思います。

右下の図は、公開されている配置図を詳細に確認できるよう、独自にGIS(地理情報システム)化したものです。さらに、環境省が実施した「緑の国勢調査」の第6・7回 自然環境保全基礎調査の調査結果(環境省生物多様性センター提供、株式会社エコリス加工)を重ね合わせて閲覧できるようにしました。

これにより、ミツバチの蜂群分布と、周囲の植生環境との相関をより視覚的に分析することが可能になります。

※経済学部周辺の蜜源植物推定マップも対応しました。

出典:東京都産業労働局農林水産部農業振興課

越冬期間中:女王蜂解放

2025年11月下旬よりダニ対策の一環で隔離していた女王蜂を、ついに解放する時を迎えました。12月中旬の内検を最後に、約1ヶ月もの間、巣箱の蓋を開けることなく静かに見守ってきたため、「無事に越冬できているだろうか」「群の勢いは保たれているか」と、胸がざわつく中での作業開始となりました。1月下旬に襲った強い寒波の影響で、東京でも厳しい冷え込みが続いています。この時期の開箱によるミツバチの体温低下は命取りになるため、最短時間で作業を終えるよう、事前に作業手順をメンバー間で共有して臨みました。

いざ確認を行い、2群とも無事に女王蜂の姿を捉えた瞬間、メンバーの間からは思わず歓声が沸き起こり、現場は大きな安堵感に包まれました。

厳しい寒さを耐え忍んできたミツバチたちとの、これが2026年最初の対面です。女王蜂の解放により、いよいよ2年目の春に向けた産卵と育児が始まります。

2025年最後の内検

11月下旬に女王蜂の隔離と同時に開始したダニ対策。薬剤投与から約4週間が経過したため、薬剤の除去と2025年最後となる内検を実施しました(参考:ミツバチヘギイタダニ対策:第1弾第2弾第3弾)。当日は、風の弱い暖かい日となったため、気温が十分に上がった午前11時頃から内検を開始しました。また、今回は都市養蜂に興味を持っている学生も見学に訪れました。

まず、養蜂箱の底に設置した下敷きのダニの落下状況を確認したところ、秋口の数と比べるとほとんど見られませんでした。また、巣板およびミツバチを目視してもダニの姿が見当たらず、これまでのダニ対策の効果が十分に伺える結果となっています。

食糧についても、夏から秋にかけて蓄えた蜜や花粉が十分にあることを内検から確認できたので、追加の給餌は不要と判断しました。これをもって2025年最後の内検を終え、引き続きミツバチたちの越冬を静かに見守っていきます。

水道蜂ハニー:最優秀賞

11月23日に行われた全国学生養蜂サミット2025(ミツバチサミット2025)に参加しました。全国各地の高校・大学から集まった学生養蜂家の方々と、共通の話題で活発な意見交換を行い、大いに盛り上がりました。やはり共通の課題として、ダニ対策やスズメバチ対策などが主な話題となりました。今年4月から養蜂を始めた私たちとは異なり、中には10年を超える歴史を持つ学校もあり、その活動の重みと伝統を感じました。私たちもその経験に学び、活動を継続・発展させていかなければならないと強く感じています。

午前中は口頭発表を行い、午後からはブース展示を実施しました。日頃からお世話になっている学校関係者の皆様への感謝の気持ちを込め、3Dプリンターで製作したBeeスペーサー(育児圏8mm、貯蜜圏12~15mm)の配布や、BeehiveHookの展示を行いました。

さらに、「水道蜂ハニー」の試食会も実施しました。これほど大勢の方に試食していただく機会は初めてでしたので、「美味しい」という感想をいただけるか、正直少し心配でした。しかし、その心配はすぐに杞憂に終わりました。試食された皆さんが笑顔で「美味しい」と言ってくださる表情を見て、私たちも大変大きな喜びを感じました。

これらの活動に加え、活動の「ご褒美」とも言える素晴らしい成果をいただきました。サミット内の「はちみつ品評部門」において、日本大学経済学部3号館屋上での活動で生産した「水道蜂ハニー」が、見事最優秀賞を受賞いたしました。

今後も、安全で質の高い養蜂活動を通じて、皆様に喜んでいただける「水道蜂ハニー」をお届けできるよう、プロジェクト一同邁進してまいります。

ありがとうございました‼

ミツバチヘギイタダニ対策 -3-

当初、秋の採蜜を目標としていましたが、残念ながら予想以上にハチミツが集まらず、今回は採蜜を断念しました。これからは本格的な越冬に向けて、ミツバチたちが無事に冬を越せるよう、準備を進めます。

まず、越冬に備えた重要なミツバチヘギイタダニ対策の第3弾を実施しました(参考:第1弾第2弾)。女王蜂の隔離を行い、ダニ対策用の薬剤アピバール、チモバールを設置し、前回同様にダニの落下状況を確認するため、プラスチック下敷きを巣門に設置しました。薬剤の投与期間は4~5週間を目安にし、除去はミツバチが活発に活動している暖かい日に行う予定です。

また、ミツバチが快適に越冬できる環境を作るため、巣箱の調整を行いました。巣門は、冷たい風や外敵の侵入を防ぐために狭くしています。次に、ミツバチが密集して温まりやすい状態になるように、飼育域を縮小しました。具体的には、継箱を片付け、育児圏の1段に集約し巣箱をコンパクトにしました。さらに、越冬に必要な食糧のために秋に貯めたハチミツの巣板を残して、不必要な空の巣板は取り除きました。

薬剤設置・巣箱のコンパクト化(251121撮影)

ミツバチサミットへの意気込み

2025年11月22~24日のミツバチサミット2025に水道蜂プロジェクトも23日の全国学生養蜂サミット2025ポスターセッションに参加させていただきます。初めてのミツバチサミットに参加するので、サミットの雰囲気が分かりませんが、多くのプロの養蜂家さんや学生養蜂家の皆さんと交流できることに、今から胸が高鳴っています。

ブースでは、私たちが採蜜した「水道蜂ハニー」をご試食いただけるよう準備しています。また、「水道蜂クリーム」などの関連製品の展示も検討中です。差別化を図るべく制作したショートムービーは、少々「攻めた」内容になってしまいましたが、会場を明るく盛り上げられれば幸いです!

ポスターセッションでは、真面目に「夏季における巣箱の過熱対策とその有効性」というタイトルで発表を行います。この研究を一言で要約すると、,「都市養蜂の巣箱の過熱対策には、白色塗装と遮熱反射板の組み合わせが極めて有効である。」という結論です。屋上という過酷な環境下で、ミツバチを守るため、真夏の晴天日に様々な条件下で科学的な温度計測を実施し、その有効性を実証しました。この成果を基に、今後の養蜂箱の改善を進めていきます。

ぜひブースとポスターセッションにお立ち寄りください!お待ちしています!

要旨は以下の通りです。

近年、都市養蜂はビルの屋上などでの飼育が増加している。しかし、屋上という場所は日陰が少なく、温暖化による夏季の猛暑とコンクリートの照り返しにより、ミツバチに過酷な熱ストレスを与え、群勢衰退の深刻な要因となっている。本研究は、この課題に対処するため、養蜂箱の過熱対策である塗装色の選択と遮熱反射板の有無を比較検証することを目的とした。異なる塗装色と反射板の組み合わせを施した巣箱を用い、夏季の晴天日における巣箱内部の温度変化を計測した。その結果、白色および反射板の設置が温度上昇を効果的に抑制する極めて有効な対策であることがわかった。

全国学生養蜂サミット2025 / ショートムービー
研究の一例(熱赤外画像による温度計測)