3号館屋上

水道蜂プロジェクトは、3号館屋上に養蜂箱を設置しています。この屋上は、大規模な空調施設や太陽光パネルなどが大部分を占めていますが、ミツバチを飼育できるスペースとして幅3m × 長さ7mの限られたエリアを確保しています。緑の少ない都会の環境の中で、ミツバチがどのように蜜源を見つけ、飛行ルートを定めているのか、ず~~っと疑問でした。また、屋上は安全確保のため背丈を超えるフェンスで厳重に覆われているため、なかなか外の景色を眺めることができません。

そこで私たちは、ミツバチの目線での景色はどのようなものか確認したいと考え、7mの測量スタックの先端にデジタルカメラ(RICHO GR)を取り付け、タイムラプス機能を用いて数百枚の画像を撮影しました。さらに、これらの膨大な画像をパノラマ作成ソフトで精密に合成し、一枚の広大な俯瞰画像を作成してみました。

3号館屋上からの眺め(250817撮影)

普段は意識しない屋上からの眺望を確認すると、広大な緑地である皇居が予想以上に近くに位置していることに驚きを感じました。この発見は、ミツバチの主要な蜜源の推定や、都市環境における採餌行動の分析を行う上で非常に重要な手掛かりではないかと考えられます。都市での養蜂だからこそ得られた貴重な知見ですね。

女王蜂解放

8月13日のお盆から隔離した女王蜂を約4週間経過した9月11日に解放しました。使用した全面隔王篭は、働きバチは行き来できるのですが、体の大きい女王蜂は篭内でとどまり、産卵を停止させるためのものです。ミツバチヘギイタダニの繁殖は封蓋された巣房内でのみ行われます。そのため、女王蜂を隔離して産卵をストップさせることは、ダニの繁殖サイクルを断絶する上で非常に重要な役割を果たします。働き蜂が卵から成虫になるまで約21日間(約3週間)かかることから、この隔離期間を取ることで、コロニー内の封蓋された蜂児が全て羽化し、ダニの繁殖場所が一時的になくなった状態になります。このタイミングを見計らい、隔離から約2週間後の8月27日にダニ対策用の薬剤を設置しています。

ミツバチイタヘギダニ対策

お盆期間中に採蜜を行っていた2つの巣箱から女王蜂を隔離していましたが、その2週間後となる8月27日にミツバチヘギイタダニ対策のための薬剤を設置しました。このダニはミツバチに寄生して病気を引き起こすため、冬を越すためには欠かせない重要な作業です。

今回使用したのは「アピスタン」です。現在、日本で認可されているダニ対策用の薬剤は、アピスタン、アピバール、チモバールの3種類のみになります。この限られた選択肢の中から、私たちは、以前熊谷養蜂で開催された干場先生の「ヘギイタダニ抑制と駆除方法」講習会、そして渡辺先生からのアドバイスを参考に、アピスタンを設置することを決定しました。

干場先生の講習会では、薬剤で巣箱の底に落下したミツバチヘギイタダニが狭い場所に集まる習性があると教わりました。そこで、雨に濡れても大丈夫なプラスチック下敷きを巣門に設置してみました。その結果、設置してから5日後の内検では大量のミツバチヘギイタダニが下敷きの狭い隙間に集まっていました。内検時では、小さくて見逃してしまいがちなミツバチヘギイタダニがこんなにいるとは・・・驚きです(アプリで撮影画像のダニをカウントすると168匹)。このダニ対策がきちんと出来なければ、ミツバチは無事に冬を越せません。

お盆も内検

5月のGWに続き、お盆期間中も大学の長期休暇に伴い、校舎への立ち入りが制限されます。こうした状況の中、大学事務の協力により、特別に屋上への立ち入り許可をいただくことができました。

この時期から、私たちはミツバチたちが無事に冬を越せるよう、本格的な準備を始めます。まずは、ミツバチの健康を守るためのミツバチイタヘギダニ対策です。まずは、採蜜を行っている2群の女王蜂を隔離しました。女王蜂を休ませることで産卵を一時的に止め、ダニの繁殖サイクルを断ち切る狙いがあります。女王蜂も夏休みです。2週間後には、ダニ対策用の薬剤を設置する予定です。

また、女王蜂のバックアップとして、人工分蜂で新しい女王蜂も育てています。新女王蜂の産卵も確認できたので、翅切りを行いました。この作業は何度やっても緊張しますが、無事に終わるとホッとします。

コンクリートに囲まれた屋上はかなりの熱気を帯び、作業中は汗が止まりません。しかし、ミツバチたちが健やかに育つ姿を見ると、疲れも吹き飛びます。このお盆期間も、ミツバチたちが快適に過ごせるよう、しっかりと見守っていきます!

広報さかど&週刊文春で紹介

嬉しいニュースが届きましたっ!!

先日、坂戸市長への表敬訪問の様子が、多くの市民の皆様に読まれている「広報さかど8月号」(発行部数:約5万部)でご紹介いただきました。Webからでも閲覧できます。

さらに、私たち日本大学の理事長で作家である林真理子理事長が、週刊文春で連載している人気エッセイ「夜ふけのなわとび」で私たちの「水道蜂ハニー」を取り上げてくださいました。

市民の身近な広報誌から、全国的な影響力を持つ週刊誌まで、私たちの取り組みが様々な形で注目を集めていることに、心から感謝申し上げます。これを励みに、これからも皆様に関心を持っていただけるような活動を続けてまいります。ぜひ、それぞれの媒体で詳細をご確認ください。

台風対策

2025年8月1日(金)の深夜から2日(土)の未明にかけて、関東地方に接近した台風9号(Krosa)が通過しました。屋上で養蜂を行っていると、台風接近のニュースに関しては敏感になります。私たちが設置している場所は、地上から約50m高い場所のため、地上よりも強風が吹くます。さらに、人の多い都市域なので、強風による巣箱の転倒や落下などの事故は絶対に防がなければなりません。そのため、私たちは以下のような台風対策マニュアルを準備し、実践しています。初年度なので不備な点が多いのですが、改善点があり次第マニュアルを改定していきます。

台風対策マニュアル(水道蜂プロジェクト)

水道蜂ハニー

2回目の採蜜が無事に終了し、水道蜂プロジェクトから、「初夏(糖度83%)」と「盛夏(糖度80%)」という二つの個性豊かなハチミツを用意することができました。同じ場所で採れたハチミツでありながら、これほどまでに異なる表情を見せるのは、都市の自然が持つ多様性と、季節ごとの花の移り変わりによるもの。まさに、都市の環境が豊かであることの証でもあります。

春から初夏にかけてミツバチたちが集めてくれた蜜で、都市の木々や草花が芽吹き、生命力あふれる時期の恵みが凝縮されています。主にトチノキ、ツツジ、ネズミモチといった初夏の街路樹の花々など、多様な蜜源から集められた百花蜜になります。

「初夏」のハチミツの特徴は、その繊細でどこか儚い香り、そして爽やかな甘みになります。主張しすぎない上品な甘さは、パンケーキやヨーグルトなど、素材の味を活かしたいシーンにぴったりです。早朝の清々しい空気を感じさせるような、軽やかな後味も魅力の一つです。

今回新たに加わったのが「盛夏」のハチミツです。真夏の日差しをたっぷり浴びて咲き誇る花々から、ミツバチたちが精一杯集めてくれた蜜です。夏ならではの蜜源植物が豊富に含まれています。

「盛夏」のハチミツの特徴は、その奥深いコクと豊かな風味です。初夏の蜜とは対照的に、濃厚でしっかりとした甘みがあり、一口食べると夏の太陽のエネルギーを感じさせるような力強さがあります。チーズやナッツとの相性も抜群で、コーヒーや紅茶に入れると、その存在感で味わいを一層引き立ててくれます。

水道蜂ハニー(左:盛夏、右:初夏)

2回目の採蜜、ハチミツ16kg!!

6月12日(木)に最初の採蜜を終えてから1ヶ月あまり。7月24日(木)に第2回目の採蜜を行いました。今回は、前回渡辺先生に教えていただいた手順を思い出しながら、学生たちだけで採蜜を実施しました。今回は採蜜作業を効率化するために、脱蜂板(Bee Escape)を前日に設置しました。これは、ミツバチが巣箱へ移動した後、継箱に戻ることを防ぐことで、ミツバチの動きを一方通行に制限する仕組みになります。この工夫により、ミツバチを振り落とすといった余計なストレスを与えることなく、スムーズに採蜜ができるようになりました。

この時期は朝でも日差しは強く、面布+つなぎの姿に着替えるだけで汗が止まらず、服はびしょ濡れになってしまいます。特に屋上は日陰になるスペースが少ないため、短い作業でもこまめな水分補給が欠かせません。

2回目の採蜜は16kgとなりました。今年は空梅雨であったため、梅雨の時期でもミツバチたちは蜜を貯めることができたと考えられます。この時期は湿度が高く、一般的に糖度が低下する傾向がありますが、採れた蜜の糖度は約80%と高く、発酵の心配もありませんでした。

また、当日は日大本部の方々も取材にお越しになり、採蜜の様子を見学されました。採蜜作業後は、PMの大川くんが1時間近く取材を受けました。この様子は来年刊行予定の「2027年度進学ガイド」に掲載される予定です。今から掲載が楽しみですっ!!

ミツバチに刺される

ミツバチの中で毒針を持つのは雌蜂(働き蜂)のみで、雄蜂は針を持ちません。女王蜂も働き蜂と同様に毒針を持っていますが、子孫繁栄を優先するため、人を刺すことはほとんどありません。また、スズメバチやアシナガバチと違って、ミツバチは温厚な性格なため、自分たちの身に危険が迫っていると感じない限り、積極的に人を刺すことは少ないです。雌蜂の針には「返し」がついているため、一度刺すと針が体の内臓ごと抜け落ちてしまい、雌蜂自身は死んでしまいます。これは、雌蜂にとって「命がけの攻撃」であるため、むやみに刺すことはありません。

先日、新女王の交尾を確認するため、夕方16時から内検を行った際のことです。この日は夕方から風が強くなり、ミツバチたちも少し落ち着かない様子でした。ゴム手袋をしていたにもかかわらず、その針が貫通し、手にチクリと刺されてしまいました。刺された直後はじんわりと熱さを感じましたが、幸いにも強い痛みではなかったため、そのまま内検を続けることができました。ただ、一度刺されてしまうと、次に刺されたときにアナフィラキシーショックが起きないか、少し心配になるのも正直な気持ちです。ミツバチと接する際には、彼らの特性を理解し、お互いにとって安全な距離を保つことが大切だと改めて感じました。

坂戸市長表敬訪問

埼玉県坂戸市は、2013年度から全国に先駆け、自治体によるミツバチ飼育と市民への養蜂普及というユニークな取り組みを進めています。私たちの水道蜂プロジェクトも、これまで多くの貴重なアドバイスをいただいてまいりました。

今回は、初採蜜ができた報告を行うため、坂戸市長を表敬訪問しました。石川清市長ご自身も養蜂に取り組んでいらっしゃることから、当日は今後の販売戦略などについて、実践的なアイデアを多数ご提案いただき、大変有意義な時間を過ごすことができました。